東海会からのお知らせ

【インタビュー】実践データサイエンティスト育成プログラムのご紹介(IT委員会より)

2023年04月02日
名古屋大学で実施されている「実践データサイエンティスト育成プログラム」について、IT委員会 鈴木 徹也委員長から名古屋大学 中岩 浩巳さまに詳しくお話を伺ってみました!


中岩 浩巳(なかいわ ひろみ)さま
名古屋大学 数理・データ科学教育研究センター
 実世界データ循環学リーダー人材養成プログラム
 博士課程教育推進機構 特任教授/博士(工学)


インタビュアー 鈴木 徹也(すずき てつや)
有限責任監査法人トーマツ リスクアドバイザリー事業本部
 中京リスクアドバイザリーマネージングディレクター
 日本公認会計士協会 テクノロジー委員会 未来の監査専門委員会 専門委員
 日本公認会計士協会 東海会 IT委員会委員長
 公認会計士 公認内部監査人 システム監査技術者



※2023年3月28日 日本公認会計士協会東海会にて対談を実施

鈴木委員長
 先日、先生に私が所属する監査法人で、「実践データサイエンティスト育成プログラム」のご紹介をいただきまして、非常に充実したプログラムで、監査業務等で活用できる側面も多いように感じたものですから、東海会全体にも紹介したいと思ったためにこのような機会をもうけさせていただきました。今日はよろしくお願いします。まずは、プログラムの概要についてご説明いただけませんでしょうか。


中岩先生
 本プログラムは今から4年前、文部科学省のファンドをいただいて、名古屋大学、岐阜大学、三重大学、広島大学が連携して実施しており、今期が5期目となります。大学院生生のみならず社会人にも参加いただいており、リスキリニング、リカレント教育としての意味合いもあります。
 特色としては実世界データ演習という、実世界での様々な課題について、社会人と大学院生がチームを組んで、実データを分析し課題解決にむけた提案をするところに特色があります。100時間程度オンデマンドで受講し、学んだことを実証的に検証、実践する特色をもっています。令和3年度は5課題、令和4年度は7つ取り組んでいました。今年度の政府の骨太の方針でもAI人材は重視されており、このプログラムも充実させています。


鈴木委員長
 なるほど。大変興味深い内容ですね。監査業務でもデータを利活用する局面も増えています。昨年度公表した日本公認会計士協会のビジョンペーパーでも、クライアントのDXの進展をうけて、我々会計士もデータから洞察を見出すようなスキルが重視されつつあり、監査の効率化、品質の高度化の観点からも、会計士のデータ利活用スキル向上の必要性が協調されています。
 公認会計士の監査業務やコンサル業務を念頭に置いた場合、先生のお立場で監査に参考になりそうな事例はございますか。


中岩先生
 会計士の先生方の監査業務について詳しいわけではありませんが、いろいろな企業さんに監査するにあたって、企業がデータ分析にあたり、どんな技術を使ってどういう課題を解決しているかの理解は重要だと思います。従来型ではなく、最新のデータサイエンスのスキルを備えて、こういう見方がある、こういうやり方があるという視点が重要ではないかと考えます。
 このプログラムでは実世界のデータ分析を行うことに特色があり、公認会計士業務の関連では、「資材の発注点分析にどういうような指針で、需要を予測すればよいか」、「製造ラインの最適化」、マーケティングの観点では、「飲食業の集客、店舗の立地検討」といったテーマを検討しており、公認会計士業務に近いのではないかと考えています。
 実際に公認会計士にも参加いただいており、コミュニティバスの活用の効率化、バス停の立地などを検討していただきました。特に、課題提供者からみた視点を意識して演習に取り組んで頂いている点が、大学院生にはないものだと感じております。バスの効率的な運航の枠を超えて、さらに観光地化して、バス利用を促すような発想は学生からは出てこないものだとおもいます。大学院生は理的知識に優れ、社会人は実社会の経験値をもっており、両者が協働することで、良い成果を出しています。
 このほかにも、先ほどにも申しましたが、適正な発注点をとらえるために需要予測をしたり、飲食業の会社が、出店計画を作成するにあたって、近隣店舗の状況や、商圏人口等を分析すると切り口でデータ分析を行っているケースはあります。





鈴木委員長
 データ監査自体は、コンピュータが普及しだしてから脈々と続いており、仕訳分析などは従来から実施しています。不正や異常を示すような仕訳はないかの検討はしてきました。また、BIツールを使った分析が普及してきています。
 他方で、特に、最近の監査は、見積情報や将来予測の影響を受ける項目が多く、たとえば、減損の判断にあたっては、各店舗の将来の収益性など事業計画について、被監査会社が策定したものを批判的に検討、計画の合理性を判断する局面が出てきます。まさにそういった局面でデータ分析の知見が必要となってきます。


中岩先生
 そうですか。需要予測という意味では、物流業界でドライバーをどう配置するか、いつどのくらい集荷があるか、いろんなレベルでAIを活用し、時系列データで需要予測する、あるいは、特定の属性で、クラスタリングするといったこともやっています。監査業務でも関連する局面はあると思います。
 さきほどの飲食でもPOSデータを分析し、出店、追加投資の店舗の検討に生かすようする事例や、金融機関が外貨取引のデータを分析し、顧客への商品販売に活用するといった事例があります。こうした分野は、データサイエンスの重要なものの一つであり、会計士の業務と近い領域だと考えます。
 会計士の先生方にも受講いただくことでより、関心の強いテーマを検討いただくこともできますし、大学院生や他の社会人にとっても会計士の考え方は参考になることは多いのではないかと思います。


鈴木委員長
 なるほど。監査業務では、会社が将来予測をすると、監査人は批判的に検討する必要が出てきます。例えば小売でAIにより、発注量分析しアルゴリズムで発注していますという場合に、はいそうですか。というわけにはいきません。


中岩先生
 コロナで売上が下がった場合にどう回復していくかの商圏分析、他にどんな競合がでているか、といった分析企業はしています。そういった分析をすることで、監査する上での将来見込みが正しいかを判断する上での知識も習得いただけるのでないでしょうか。


鈴木委員長
 非常に興味深いお話ですね。私自身が、このプログラムを受講したくなってきました。では、少し観点をかえて、最近のデータ分析にかかるトピックスはなにかありますか。




中岩先生
 日本全体がDXの風潮で、そういう意識のある会社は多いが、データがデジタル化されていない会社がまだまだ多い印象です。
 その他では、チャットGPTが話題となっています。実は、私も自然言語解析を研究しているのですが、言語処理学会でいくつかは研究対象ではなくなるのではないかといった話も出ています。特に質問応答に関しては非常に良くできています。他方で、ほんとにそれが正しいかの判断が大事になってきます。ほんとに正しい分析なのか、出てきたものを説明できる必要があります。チャットGPTの活用はよいが、分析の結果が本当に正しいかを実証することもあわせて実施する必要があります。
 また、AIに学習させるデータの選び方を考えないといけません。監査業務でもデータの与え方の観点で、監査人が持っているカンが生きてくるのではないでしょうか。AIが進展し、無くなる業種に会計士がありましたが、自然言語分析もそういう危機感がある。データありきなので、目的に応じでどういうデータを整備していくのかが大事で、そこが専門性を活かせる領域なのではないかと考えております。


鈴木委員長
 チャットGPTが広がり、意図的に偏った回答をするAIも作れてしまうのではないか。分析結果を鵜呑みにしてしまうのと恐ろしいと感じています。他方で、ネットにある情報が元なので、それ以上は出てこない。そこが課題ではないかと思います。


中岩先生
 AIはデータを学習するので、データのバイアスで結果は異なります。ネガティブなデータを入れなければそういう結果になります。適正な回答を出させるには、使いやすいようなデータセットを準備して、AIに学習させることが重要ではないでしょうか。
 他方で、会社ごとに、データを取り巻く状況は異なり、十分なデータがそろっている環境は稀です。そういう意味では、実際のデータを扱う経験がすごく重要です。どういう切り口で分析するか、データを作る側、現状あるデータからどういうルートで分析すれば効果的な結果がだせるか、そういったスキルが大事になってくる。データサイエンス×専門家、AI×専門家といった掛け算が大事で、データサイエンス×会計専門家であれば、鬼に金棒、データを価値に変える人材が重要になってくる。会計士もそういう方向にすすめばよいのではないでしょうか。


鈴木委員長
 監査業界は、AIで仕事がなくなるという話が出たときに、監査はそんな単純なものじゃないという論陣を張りましたが、チャットGPTをみるとかなり気の利いた回答をするので、危機感と緊張感を持って、AIを勉強する必要があると私は思っています。チャットGPTが監査すれば会計士いらないという風になってはいけないと思います。


中岩先生
今あるデータをもとにAIは設計されており、将来、特定の企業、特定の分野に特化したものはデータがなく弱い。定型的なところはチャットGPT、個々の場面は各自のスキルが生きるのではないでしょうか。


鈴木委員長
 実際、チャットGPTを使ってみると、自分の専門領域の回答は、もっともらしいがたまにおかしな回答もあることがわかりますが、逆に言うと、専門領域外で、事実じゃない情報を見抜けるかといわれると自信がないのが正直なところです。


中岩先生
 チャットGPTなど、確からしさというものの、深層学習というのは、ぱっと見の回答はいいのですが、よくよく見ると違っているケースは多い。根拠を示すのが苦手で、なぜその答えなのかを説明することが困難な傾向にあります。


鈴木委員長
 なるほど、会計士にとっての不正摘発ではありませんが、違和感やカンが重要で、本質を見抜く力がますます必要になると感じました。
 お話は尽きませんが、今回の対談を通じて、「実践データサイエンティスト育成プログラム」はオンデマンドの100時間の研修で得た知識を実世界データ分析で実証すること、さらに、会計士業務に近しいテーマを研究することがわかりました。非常に魅力的なプログラムですので、会員・準会員のみなさんも関心を持ってくれるのではないかと期待しています。プログラムを通じて、様々なバックグランドの受講生と協同で研究できることも魅力だと思います。中岩先生、お忙しい中本日はありがとうございました。
 また、チャットGPTのお話については、我々会計士がAIと向き合う上でのヒントをいただき今後の参考とさせていただきたいと思います。


中岩先生
 今回はこのような機会をいただきありがとうございました。募集期間は4月3日から4月21日正午までで、2023年4月10日にはオンラインで説明会を実施予定です。こちらは録画して配信予定ですので、ぜひご覧いただければと思います。皆様の応募をお待ちしております。

名古屋大学 数理・データ科学教育研究センター データサイエンティスト育成事業について
募集対象:社会人、大学院生
募集期限:2023年4月21日(金)12:00
  ※一次募集、二次募集ともに締切となりました。
応  募:https://www.mds.nagoya-u.ac.jp/recruitment
上記「オンライン説明会」の配信URL:https://www.mds.nagoya-u.ac.jp/info-session


中岩先生、ありがとうございました!